前立腺がんとは、男性にのみ存在する前立腺に発生する悪性腫瘍です。前立腺は膀胱の下に位置し、尿道を取り囲むように存在しており、精液の一部を作る働きをしています。
前立腺がんは、進行が比較的ゆっくりなケースが多いことが特徴です。そのため、初期段階では自覚症状がほとんどなく、健康診断や血液検査をきっかけに発見されることが少なくありません。一方で、進行すると骨などへ転移する可能性もあるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。
日本では高齢化の影響により患者数が増加しており、男性のがんの中でも発症率が最も高い疾患となっています。
前立腺がんの原因
前立腺がんの原因については、現在の医学でも単一の明確な原因は特定されていません。しかし、多くの研究から、いくつかの要因が重なり合って発症すると考えられています。
最も大きな要因として挙げられるのが加齢です。前立腺がんは高齢になるほど発症率が高くなり、特に60歳以降で急激に増加します。これは、長年にわたる細胞分裂の過程で遺伝子に異常が蓄積しやすくなるためと考えられています。
次に重要なのが男性ホルモン(アンドロゲン)の影響です。前立腺は男性ホルモンによって成長や機能が維持されている臓器であり、このホルモンが前立腺がんの増殖にも関与しています。そのため、男性ホルモンの分泌が活発な状態が長く続くと、がん細胞が増えやすくなる可能性があります。
また、遺伝的要因も無視できません。父親や兄弟など、近親者に前立腺がんの患者がいる場合、発症リスクが通常より高くなることが分かっています。特に複数の家族が罹患している場合は、注意が必要です。
さらに、食生活の影響も指摘されています。脂肪分や動物性たんぱく質を多く摂取する食事は、前立腺がんのリスクを高める可能性があります。欧米型の食生活が普及したことで、日本でも前立腺がんが増加していると考えられています。
加えて、肥満・運動不足・生活習慣の乱れなども、間接的に発症リスクを高める要因とされています。これらはホルモンバランスや免疫機能に影響を与えるため、日頃の生活習慣が重要になります。
前立腺がんの場合に現れる症状
前立腺がんは、初期段階では自覚症状がほとんどないことが最大の特徴です。そのため、症状が出た時には、ある程度進行しているケースも少なくありません。
がんが前立腺内で大きくなると、まず排尿に関する症状が現れやすくなります。前立腺は尿道を取り囲む位置にあるため、腫瘍が尿道を圧迫すると、尿の出が悪くなったり、排尿に時間がかかったりします。具体的には以下のような症状が見られます。
- 尿の勢いが弱くなる
- 排尿後も残尿感がある
- 頻尿、特に夜間頻尿
- 排尿時の違和感や不快感
さらに進行すると、血尿や血精液が見られることがあります。これらは必ずしも前立腺がん特有の症状ではありませんが、重要なサインの一つです。
がんが前立腺の外へ広がり、骨やリンパ節に転移した場合には、排尿症状とは異なる症状が現れます。特に多いのが腰・背中・骨盤・脚などの骨の痛みです。場合によっては、骨折しやすくなることもあります。
なお、これらの症状は前立腺肥大症や前立腺炎でも起こるため、症状だけで前立腺がんと判断することはできません。少しでも異変を感じた場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
前立腺がんの治療方法
前立腺がんの治療は、がんの進行度(ステージ)・悪性度・年齢・全身状態・生活の質(QOL)などを総合的に考慮して決定されます。患者一人ひとりに合った治療方針を選ぶことが非常に重要です。
主な治療方法の一つが手術療法です。前立腺を全て摘出する「前立腺全摘除術」が行われ、比較的早期の前立腺がんに適しています。根治が期待できる一方で、術後に尿失禁や性機能障害が起こる可能性もあるため、慎重な判断が必要です。近年ではロボット手術の発達により多くの病院でより低侵襲で手術が行えるようになってきました。
次に放射線治療があります。体の外から放射線を当てる方法や、前立腺内に放射線源を埋め込む方法があり、手術と同程度の治療効果が期待できる場合もあります。身体への負担が比較的少ない点が特徴です。
ホルモン療法は、男性ホルモンの働きを抑えることで、がんの増殖を抑制する治療法です。進行がんや再発時、他の治療と併用されることも多く、前立腺がん治療の中心的な役割を担っています。
また、進行が非常に遅く、症状がない場合には経過観察が選択されることもあります。定期的に検査を行い、必要になった時点で治療を開始します。
さらに、進行・再発した前立腺がんでは、化学療法(抗がん剤治療)が行われることもあります。
前立腺がんの治療は選択肢が多いため、医師と十分に話し合い、納得した上で治療を決めることが大切です。
前立腺がんの検査方法
前立腺がんの検査は、早期発見と正確な診断を目的として、複数の検査を段階的に行います。単一の検査だけで確定診断に至ることは少なく、結果を総合的に判断します。
まず行われるのがPSA検査です。PSA(前立腺特異抗原)は前立腺から分泌されるたんぱく質で、血液検査によって数値を測定します。前立腺がんがある場合、PSA値が高くなる傾向があります。ただし、前立腺肥大症や前立腺炎、射精でも上昇するため、PSA値が高い=前立腺がんとは限りません。
次に行われることが多いのが直腸診です。医師が肛門から指を入れ、前立腺の硬さやしこりの有無を確認します。短時間で行える検査ですが、触診で異常が分かる場合もあります。
PSA検査や直腸診で異常が疑われた場合、MRI検査が実施されます。MRIでは、前立腺内のがんの位置や広がり、悪性度の推定が可能で、生検の精度向上にも役立ちます。
最終的な確定診断には、前立腺生検が必要です。これは、前立腺から組織を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を調べる検査です。生検によって、がんの有無だけでなく、進行の速さ(悪性度)も評価されます。
前立腺がんの予防・対処方法
前立腺がんを完全に予防する確実な方法は存在しませんが、発症リスクを下げたり、早期発見につなげたりするための対策はあります。
まず重要なのが、生活習慣の見直しです。脂肪分の多い食事を控え、野菜・果物・魚を中心としたバランスの良い食生活を心がけることが推奨されています。特に抗酸化作用のある食品は、がん予防の観点からも注目されています。
次に、適度な運動習慣です。ウォーキングや軽い筋力トレーニングなど、無理のない運動を継続することで、肥満の予防やホルモンバランスの改善につながります。
また、定期的な健康診断やPSA検査は非常に重要です。前立腺がんは症状が出にくいため、検査を受けなければ発見が遅れる可能性があります。特に50歳以上の男性や、家族歴がある方は、定期検査を意識することが大切です。
日常生活で排尿の変化や違和感に気づいた場合は、「年齢のせい」と自己判断せず、早めに医療機関を受診することが、結果的に最も有効な対処法となります。
前立腺がんについてのよくある質問
前立腺がんは進行が遅いと聞きますが、治療しなくても大丈夫ですか?
進行が非常に遅いタイプもありますが、すべてが安全というわけではありません。医師の判断に基づいた監視療法が重要です。
PSA検査は毎年受ける必要がありますか?
年齢やPSA値によって異なります。医師と相談の上、適切な頻度を決めることが推奨されます。
前立腺がんは転移しやすいがんですか?
進行すると骨に転移しやすい特徴がありますが、早期発見であれば転移のリスクは低くなります。
治療後に仕事や日常生活へ復帰できますか?
多くの方が復帰可能です。治療内容によって回復までの期間は異なります。
性生活への影響は必ず出ますか?
影響が出る場合もありますが、すべての人に起こるわけではありません。治療法によって差があります。
前立腺がんは再発の可能性がありますか?
はい。治療後も定期的なPSA検査などの経過観察が必要です。
文責
巣鴨駅前たかはし泌尿器科
院長髙橋 遼平