- 血精液症とは?
- 血精液症はどんな仕組みで起こる?
- 血精液症の主な原因
- よくある“精液の色の違い”
- 血精液症の受診をした方が良いサイン
- 血精液症の診断の流れ
- 血精液症の治療方法
- 治療後の経過について
- よくある質問
血精液症とは?
射精時に精液が赤・茶色・さび色に見える状態を血精液症と呼びます。見た目のインパクトが強く不安を招きますが、若年〜中年の単発例では多くが自然に改善し、重大疾患には結びつかないことが知られています。まずは落ち着いて経過を見つつ、必要に応じて適切な診察・治療を受けることが大切です。
血精液症はどんな仕組みで起こる?
精液は精巣・精巣上体・精管・精嚢・前立腺を通って作られ、射精で尿道から体外へ排出されます。このルート上のどこかで小さな血管が破綻(切れてしまうこと)したり、炎症で粘膜が脆くなったり、結石や嚢胞・狭窄などで局所の圧が上がると、精液に血液が混じります。構造・機能の中心は前立腺と精嚢で、軽微な血管破綻でも精液は簡単に色がつきます。
血精液症の主な原因
①感染・炎症
血精液症で最も頻度が高い原因は、前立腺や精嚢、尿道の感染・炎症です。急性前立腺炎では、射精時痛や会陰部の鈍痛、発熱、排尿痛・頻尿を伴うことが多く、精嚢炎では射精後の鈍痛や違和感、茶〜さび色の着色が持続することがあります。性感染症(クラミジア、淋菌など)が背景にあると、若年層でも発症します。尿検査の白血球増多やNAAT(核酸増幅法)での病原体の検出、直腸診での圧痛・腫大が手がかりとなることもあります。治療は起炎菌や病変部位に合わせた抗菌薬が基本で、症状の改善に伴って精液の色調も段階的に正常化します。
なお、慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群では、感染がはっきりしないまま軽い血精液を繰り返すことがあり、痛みの管理や生活指導(骨盤底リラックス、長時間座位の回避、適度な射精)が併用されます。
②泌尿器科的手技・検査・処置の影響
③外傷・物理的な強い刺激
④閉塞・結石・前立腺嚢胞
射精管の狭窄や精嚢内の嚢胞、結石などの「精液の通り道のトラブル」は、局所圧の上昇や粘膜の擦過で血液が混ざる原因になります。精液量の減少や逆に増加、射精時痛、不妊の既往などがヒントになり、経直腸エコー(TRUS)や骨盤MRIで評価します。原因が明確な場合は、内視鏡的切開や嚢胞穿刺・切除、結石除去などの低侵襲治療で改善が期待できます。先天的なミュラー管遺残や前立腺洞(ウルトリクル)関連の嚢胞が関与することもあり、再発例では画像での形態評価が重要です。
前立腺や精嚢に沈着する小結石は、慢性炎症やうっ滞と関連して粘膜を刺激し、反復性の血精液を引き起こすことがあります。会陰部の軽い不快感が続き、ときどき茶色〜さび色の精液が見られるといった経過が典型です。超音波やCT、MRIで小さな高信号/高吸収域として示されることがあり、炎症コントロールと生活指導で経過観察されることも多いですが、症状が強ければ内視鏡治療を検討します。
⑤前立腺肥大症と脆弱血管
⑥全身疾患による症状の一部
よくある“精液の色の違い”
精液の色調は、出血の“新しさ”や精液の混ざり方で変わります。射精直後に鮮紅色〜ワインレッドの着色が目立つ場合は、精嚢や前立腺近傍の浅い血管からの新鮮な出血が混ざっている可能性が高く、軽微な炎症や一過性のうっ血でも起こり得ます。
時間が経った血液はヘモグロビンが分解されるため、チョコレート色や茶褐色、さび色(レンガ色)に見え、数日〜数週間にわたり色が薄くなっていくのが典型です。
色の見分けは目安に過ぎませんが、経時的な変化をメモして受診時に伝えると診断の助けになります。
血精液症の受診をした方が良いサイン
高熱や悪寒、会陰部〜下腹部の強い痛み、排尿困難・尿閉、血尿の合併、体重減少や骨痛などの全身症状は、重症感染や尿路悪性腫瘍など重要疾患の可能性を示唆します。
また40歳以上、初発、3か月超の持続、短期間に何度も再発、抗凝固薬内服や出血傾向がある場合は、年齢相応のリスクを踏まえた専門医による精査が推奨されます。特に40歳以上・持続/再発例・随伴症状がある方は、採血やPSA測定に加え、超音波やMRIなどの画像診断が初期評価に組み込まれます。
血精液症の診断の流れ
1. 問診・診察
発症時期、色の推移、性交やマスターベーションの頻度・強度、長距離サイクリングなど会陰部負荷の有無、直近の医療手技(前立腺生検・導尿)、排尿痛や発熱の存在、性感染症リスク、内服薬(抗凝固薬や抗血小板薬)等を確認します。
2. 検査(必要に応じて)
次に尿検査・尿沈渣で血尿や膿尿の有無を確認し、必要に応じて尿培養やNAAT(核酸増幅法)によるクラミジア・淋菌検査を行います。PSAは40歳以上や持続・再発例で考慮され、血液検査では炎症反応や凝固異常をチェックします。
3. 画像・内視鏡
画像は段階的に選び、まず超音波検査で精嚢・射精管・前立腺を評価し、所見やリスクに応じて骨盤MRIや尿路内視鏡(膀胱鏡)を追加します。
血精液症の治療方法
原因が同定できない単発・短期の血精液症は、性交の一時的休止、十分な水分摂取、排便時のいきみを避ける生活調整で自然に改善することが多く、色調はだんだんと薄くなるのが一般的です。感染・炎症が示唆される場合は、原因や部位(前立腺炎・尿道炎・精嚢炎など)に合わせて抗菌薬を選択し、症状改善後も再発の有無をフォローします。構造的異常(射精管狭窄、精嚢嚢胞、結石など)が背景にある時は、内視鏡的切開・摘出などの低侵襲治療が検討されます。医原性では前立腺生検後の血精液がよく見られ、数週間〜数か月で自然軽快するのが通例で、赤→茶色→正常色と推移します。
治療後の経過について
高熱や悪寒、会陰部〜下腹部の強い痛み、排尿困難・尿閉、血尿の合併、体重減少や骨痛などの全身症状は、重症感染や尿路悪性腫瘍など重要疾患の可能性を示唆します。
また40歳以上、初発、3か月超の持続、短期間に何度も再発、抗凝固薬内服や出血傾向がある場合は、年齢相応のリスクを踏まえた専門医による精査が推奨されます。特に40歳以上・持続/再発例・随伴症状がある方は、採血やPSA測定に加え、超音波やMRIなどの画像診断が初期評価に組み込まれます。
日常生活でできること
軽症・単発で経過観察となった場合は、1〜2週間を目安に性行為・マスターベーションの頻度を一時的に下げると、微小出血がとまりやすくなります。会陰部に衝撃や圧がかかる運動(長距離サイクリング、激しいスクワットなど)を控える、便秘を避けて腹圧上昇を減らす、十分な水分摂取で前立腺・精嚢分泌の粘稠性を下げる、といった生活習慣の改善は理にかなっています。色の変化や持続期間、伴う症状を簡単に記録しておくと、再受診時の判断がスムーズです。
よくある質問
Q1:どのくらいで色は元に戻りますか?
多くは数日〜数週間で改善します。前立腺生検後は数週間〜数か月続くこともありますが、徐々に薄くなるのが一般的です。
Q2:妊娠やパートナーへの影響は?
血液が混じること自体は妊娠する確率に大きく左右しませんが、性感染症が疑われる場合は検査・治療が必要です。
Q3:再発を繰り返すときは?
年齢や症状に応じて、精嚢・射精管の評価(超音波検査/MRI)やPSA測定を検討します。明確な原因が見つからないことも多いですが、その場合も予後は良好です。
もし精液に血が混ざってしまったら…
尿に血が混じっているのを発見したら、決して放置しないでください。
当院(巣鴨駅前たかはし泌尿器科)の外来でも血精液症に関するご相談・検査を承っております。「もしかしてこれは血かも?」と不安に感じたら、お一人で悩まずにまずはご連絡ください。早期発見・早期治療が何より大切です。
ご予約はこちらから
https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg09347
※参考文献・出典
・Patient.info(臨床向け概要):Haematospermia(2024年更新).
https://acsearch.acr.org/docs/70547/Narrative?utm_source=chatgpt.com
・Cleveland Clinic(患者向け解説):Blood in Semen (Hematospermia).
https://patient.info/mens-health/haematospermia?utm_source=chatgpt.com
・AUA Update Series Lesson 13(2022):Hematospermia.
https://auau.auanet.org/sites/default/files/media/2022-04/US2022%20Lesson%2013.pdf?utm_source=chatgpt.com
・ACR Appropriateness Criteria(2025改訂):Hematospermia.
https://acsearch.acr.org/docs/70547/Narrative?utm_source=chatgpt.com
・Urology Research & Practice(2022):Efesoy O, Novel Algorithm for the Management of Hematospermia.
https://urologyresearchandpractice.org/Content/files/sayilar/208/398-405.pdf?utm_source=chatgpt.com
文責
巣鴨駅前たかはし泌尿器科
院長 髙橋 遼平