マイコプラズマ・ウレアプラズマ検査はなぜ大切?~4菌種同時PCR検査のススメ~
「マイコプラズマ」や「ウレアプラズマ」という名前をご存知でしょうか? これらは主に性行為でうつる細菌の一種で、男女の尿道や生殖器に感染し、時にトラブルを引き起こします。実は尿路生殖器に感染するマイコプラズマ・ウレアプラズマには以下の4種類の菌が特定されており、それぞれが感染症の原因になる可能性があります。
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マイコプラズマ・ジェニタリウム(以下ジェニタリウム)
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マイコプラズマ・ホミニス(以下ホミニス)
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ウレアプラズマ・ウレアリチカム(以下ウレアリチカム)
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ウレアプラズマ・パルバム(以下パルバム)
当院では上記4菌種すべてを一度に調べられるPCR検査を自費で行っています。この検査を受けると何が分かり、どんなメリットがあるのか、症状がある方もない方も分かりやすく解説します。
症状がある方へ:原因菌を特定することで適切な治療へ
「排尿時に尿道が痛む」「おりものの量が増えた」といった症状はありませんか?こうした症状の背景には、クラミジアや淋菌だけでなくマイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症が隠れている場合があります。実際、ジェニタリウムは男性の非淋菌性尿道炎(いわゆるクラミジアでも淋菌でもない尿道の感染症)の約15~20%を占める原因菌です。ウレアプラズマ・ウレアリチカムも男性の強い尿道炎症状を引き起こす原因となる場合があり、尿道から検出されることがあります。つまり、こういった菌に感染すると、男性では尿道の炎症(尿道炎)による排尿痛や不快感、女性では子宮頸部の炎症(子宮頸管炎)や骨盤内感染症(骨盤腹膜炎など)による下腹部痛などの症状が現れることがあります。
症状がある場合、このPCR検査で原因となっている菌を特定することが大きなメリットになります。なぜなら原因菌に応じて「ピンポイントの治療」ができるからです。例えばジェニタリウム感染症の場合、一般的なクラミジア用の抗生物質(マクロライド系など)が効かない耐性菌が世界的に増えており、原因がジェニタリウムだと分かれば効果の高い薬を選択できます。またホミニスはマクロライド系抗生物質が効きにくい性質がありますが、テトラサイクリン系やリンコマイシン系の薬が有効です。このように検査で原因を突き止めることで、「効く薬で早く治す」ことにつながり、無駄な薬の使用を避けられます。
治療せずに放置したり、原因に合わないお薬で一時しのぎしてしまうと、感染が長引くだけでなく菌の耐性(薬が効きにくくなること)を招くおそれもあります。実際ジェニタリウムは一部の患者さんで治療が難しくなってきており、ある調査ではジェニタリウムの40~90%が一般的な抗生物質に対する耐性遺伝子を持っていたとの報告もあります。PCR検査で菌種を同定することは、こうした耐性菌への対策としても重要です。
放置するとこんなリスクも…早めの検査で安心を
マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症は、症状が出る人ばかりではありません。実は自覚症状がないまま保菌しているケースも多いのです。「自分は平気だから大丈夫」と思っていると、将来思わぬ形で影響が出ることがあります。放置された場合に懸念される主なリスクには次のようなものがあります。
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尿道炎の悪化(男女とも、尿道の痛み・違和感が続く)
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女性の骨盤内感染症(子宮や卵管まで炎症が広がり、慢性的な下腹部痛の原因に)
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将来的な不妊症(卵管閉塞や精子の運動低下など、妊娠しづらくなるリスク)
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妊娠中の流産・早産(妊娠初期の流産や、赤ちゃんが予定より早く生まれてしまう早産のリスク)
症状がない方でも、特に将来お子さんを望まれる場合には「ブライダルチェック」としての検査をおすすめします。実際、ジェニタリウムに感染している女性は感染していない人に比べて不妊症になるリスクが有意に高いとの研究報告があります。またホミニスの感染は流産や死産の発生率を高めるとのデータも報告されており、ウレアプラズマ(特にパルバム)は妊娠中の早産や胎膜破裂との関連が指摘されています。ある研究では、早産になってしまった妊婦さんからはウレアプラズマ・パルバムやウレアプラズマ・ウレアリチカム、ホミニスが高い頻度で検出され、正期産だった方ではそれらの検出率が低かったという報告もあります。このように、知らないうちにマイコプラズマ・ウレアプラズマに感染していると将来の妊娠や赤ちゃんに影響が出る可能性があるのです。
ブライダルチェックとしてPCR検査を受け、事前に感染の有無を確認しておくことで、将来的な不妊や早産などのリスクを未然に防ぐことが期待できます。症状がないパートナー同士で検査を受け、陽性であれば結婚前・妊活前に治療しておくことで、お二人の将来の安心につながるでしょう。
ジェニタリウムだけじゃない!4菌種すべて調べる意義
昨今、メディアなどで取り上げられることが増えたマイコプラズマ・ジェニタリウム(MG)ですが、実は前述の通り他にも注意すべき菌が存在します。「MG検査をしたから安心」と思っていても、他のホミニスやウレアプラズマ属の感染を見逃していては十分とは言えません。せっかく検査をするなら関連する4種類をまとめて調べることが重要です。
4菌種はそれぞれ特徴が異なり、症状や引き起こすリスクもさまざまです。例えばMGは尿道炎や子宮頸管炎の主要な原因菌ですが、ウレアプラズマ属は無症状であっても胎盤や羊水に感染して早産を招くケースが考えられています。ホミニスは単独では症状を起こしにくいものの、他の菌と一緒に感染すると病原性を発揮し不妊や流早産の一因になる可能性があります。このように、一種類の検査だけでは見落としかねないポイントがあるのです。
幸い、現在は4種類すべてを同時に検出できるPCR検査キットが開発されています。当院でもこの検査を導入しており、一度の検体採取(尿検査やぬぐい液の検査)でMGもホミニスもウレアプラズマ属2種もまとめて調べることが可能です。検査で原因菌が特定できれば、どの菌に対しても適切な治療薬で対応できます。4菌種すべてに対応した検査で「見逃しゼロ」の安心を提供することが、私たち医療機関の責務と考えています。
当院の検査について ~結果までの流れ~
当院では、マイコプラズマ・ウレアプラズマ4菌種同時PCR検査を自費にて受けていただけます。 保険適用がない検査ではありますが、症状がある患者さんの早期治療や、将来のリスク予防のために受ける価値のある検査です。
検査は男性であれば尿検査、女性であれば膣や子宮頸部のぬぐい液で行います。結果が出るまで約5営業日程度かかりますが、検査精度は非常に高く信頼できる方法です(マイコプラズマは培養で増やすのが難しいため、遺伝子検査であるPCRが確実です)。陽性となった場合も、それぞれの菌に適したお薬で治療を進めていきますのでご安心ください。
症状がある方は早めに原因を突き止めて適切な治療を、症状がない方も将来のために一度チェックを––マイコプラズマ・ウレアプラズマ4菌種同時PCR検査は、皆様の健康と将来の安心を支える心強い味方です。当院では専門の医師が検査・治療について丁寧にご説明いたします。気になることがあればお気軽にご相談ください。